多くのチームは、自分たちの決定はデータに基づいている、と誇らしげに主張しますが、そのプロセスには重大な盲点があることが多々あります。一見、科学的に見えるデータは誤った自信を生み出し、チームが重大なギャップを見落とす原因となる可能性があります。データは、収集から分析、プレゼンテーションまで、あらゆる段階で複雑であるため、データドリブンなプロセスと考え方を確立するのはトリッキーです。
科学の専門家である私の友人は、それが正しいと証明するのは困難なことを逆手に取り、法廷で反対意見を論破することで生計を立てています。あなたが弁護士を 100 人雇って彼に対抗しても、研究、製品、保険金請求の裏にあるデータの欠陥を彼は見つけて、訴訟を無効にします。
データドリブンな意思決定プロセスを構築する時は、数え切れないほどの落とし穴がありますが、ここでは、私のお気に入りの罪深き例を3 つ紹介します。
角度限定の自撮りカメラ: 「あなたのきれいな角度からだけ撮影します」
1.5倍ズーム顕微鏡:「ありがとう、でもあまりよく見えないよ」
ヤマアラシみたいなスイスアーミーナイフ:「怪我をせずに使えるといいね」
角度限定の自撮りカメラ
自分がキレイに見える角度から映した写真だけを投稿するインスタグラマーのように、事実の半分しか伝えないデータを収集するのは簡単です。
私はかつて、「ツールが多すぎる」という環境破壊に悩まされているソフトウェアの会社に、使用している全てのツールのデータを収集するように依頼しました。そして開発者の満足度と保守性のバランスが取れる最小限の組み合わせが見つかりました。
担当チームがインタビューやコード リポジトリのスクレイピングを通じてデータを収集してみると、多くのリポジトリが特定のニーズを持つツールを使用しており、そのツールがリストのかなり上位にランクされていることに気付きました。さらに調査を進めると、これらすべてのリポジトリは、データを収集したチームが所有していることが分かりました。収集されたデータは収集したチームだけの状況に偏っており、実際の使用頻度やアダプションは反映されていませんでした。もしデータを別の角度から見ていなかったら、開発者に大きななフラストレーションを与えていたでしょう。
リサーチやデータ収集を行うときは、客観的な精神が必要です。気に入らないものが見つかることもよくあります。それでも、自分がキレイに見える角度と悪く見える角度の両方を自撮りしましょう。結果、自分の足を撃つよりは、とてもキレイなものになりますよ。
1.5倍ズーム顕微鏡
正確なデータを収集するのは難しいため、収集しやすいものだけを集めたくなります。その時点ではコストは安く見えかもしれませんが、実際には、この「怠け」によって管理コストが高くつきます。これは、100 倍のズームが必要なのに 1.5 倍しかズームできない顕微鏡を作るようなものです。材料は同じですが、機能は異なります。
ここでは、トップダウンとボトムアップのアプローチを組み合わせるのが良いでしょう。
トップダウン: プロダクト、ビジネス、ミッションを真に反映するキーとなるKPI を数少なく設定します。ワールドクラスになりたいですか? では Netflix の SPSのように、最も重要な 1 つの KPI を目指しましょう。世界はプロキシメトリクスで追いかけるには複雑すぎます。プロキシメトリクスを避け、意図を真に表すデータに焦点をあてましょう。
ボトムアップ: 製品に適切なインストルメンテーション(計装)を装備しましょう。 ヒューマンプロセスも必要でしょうか? これは複雑で時間がかかり、多くの場合、特殊なソフトウェアが必要になります。既存のソリューションを統合する場合でも、これは長期的な作業になるため、その場しのぎではなく慎重に検討してください。本当に必要な投資を過小評価しないでください。
あなたの予算を使うなら、素敵な拡大鏡や高性能な顕微鏡を作りたくないですか?
ヤマアラシみたいなスイスアーミーナイフ
すべてのデータが表示されているダッシュボードを想像してください。それは全てのナイフと機能が開いた状態のスイスアーミーナイフに等しいです。圧倒され、怪我をするかもしれません。他の人、特に忙しい上司は、素早く見通しをつけようとするため、無関係で的外れなディテールに注目してしまう可能性があります。最良に進んでも、彼らはデータを理解せず、あなたをスルーしてしまうでしょう。最悪の場合、本来の趣旨から外れた情報を使って「素晴らしい」アイデアを思いつき、あなたにそれを実装するように求め、あなたはブラックホールへ突き進むことになります。
ナシム・ニコラス・タレブはお上品にこう表現しています。
「データが増えれば情報も増えるが、それは誤った情報も増えることを意味する。」
さらに
「道路を渡るときに周りの人の目の色に注意を払うというような、多くのデータがありすぎると、大型トラックの存在を見逃す可能性がある。」
スイスアーミーナイフをヤマアラシのように広げる前に、次のことを考えてみてください。
どんなストーリーを伝えようとしているのか?
どのような仮説をその証拠で証明しているのか?
明確な焦点がなければ、豊富なデータは、何も起こせないか、誤った行動につながる可能性があります。実現可能でかつ人の関心を引きつけた時は、何も起きないか、光り輝く何か出来上がるかのどちらかです。だから、ヤマアラシの上に座ってはいけません。快適ではありませんよ。
最後に
直感に基づく決定からデータに基づく決定に移行しても、自動的により良い決定につながるわけではありません。プロセスにデータをどのように組み込むか、慎重に検討してください。重要なのは、まず自分自身に明確で偏りのない意味のあるシグナルを伝え、次に同様に質の高いシグナルを他の人へ伝えることです。
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